ストロンググリップは拳が4つ……
ウィークグリップは拳が1つ……
お、勉強中?
ねえねえ、この「○○グリップは拳が×個見えます」ってアドバイス、全然本質的じゃない気がするんだけど……?
(ムダに鋭いなこの猫……)
グリップの分け方は色々ありますが、少しゴルフが分かってくると悩むのが、
- スクエアグリップ
- ストロンググリップ
- ウィークグリップ
の3つだと思います。
この3種類のグリップ方法ですが、実はただの握り方の話ではありません。
- あなたがどのように手首を使って
- どのように腕を動かして
- どういうスイングをしていきたいか
ということと密接に関連しています。しかし……
「ストロンググリップ」はフックが出やすいです、以上!
というアドバイス・レッスンが多いのが現状です。
そのあたり、脱初心者~中級者の人がグリップとスイングの関連性に関して、しっかりと考えていくための記事を書きました。
ちなみに本来、この3つの握り方に優劣はないんだ
なるほど~
どのグリップでもちゃんと打てるんだ~
でも、「ストロンググリップがオススメ」「ウィークはやめた方が良い!」みたいな記事をよく見ますけど……
確かに大体のレッスン、サイトでそう言われてるよね
しかし、それではウィークグリップのトッププロもたくさんいることの説明が付きません。
実際、正しいスイングで打てるようになれば、ストロンググリップとウィークグリップの難易度は大して変わりません。
(むしろ、ストロングの方が動きとしては異質です)
それでは、3つのグリップの本質に迫りましょう!
スクエア、ストロング、ウィークの本質は何なのか
スクエア、ストロング、ウィークグリップの本質が何か分かりますか?
- 左手のこぶしが何個見えている
- フック(スライス)が出やすい
- 初心者にオススメ
というのは表面上の情報に過ぎません。
では、本質は何なのか。
いきなりですが、答えを出します
言われてみれば当たり前のことなので、「そんなの当たり前じゃん」と言ってしまいたくなると思いますが、この3つのグリップの本質は
どれだけ腕をローテーションさせた状態でアドレスするか
です。
via http://www.radfordgolf.co.za/common-setup-fault-neutral-strong-or-weak-grip/
例えばストロングに握る際、「左手は上から被せて、右手は下からすくうように」というような表現が使われたりしますが、これにより変わっているのは
- 手のひらや甲の向き
- 左こぶしの見える数
- 親指と人差し指が作る矢印が示す方向
ではありません。
厳密には
腕のローテーション量
が変わっているのです。
つまりストロンググリップにおいては、はじめから
- 左腕をインターナルローテーション(内側へ回す動き)
- 右腕をエクスターナルローテーション(外側へ回す動き)
させた状態で握っている、という考えが大元です。
分からない用語はこちらへ
ゴルフスイング用語集
(中~上級者向け)
では、腕のローテーション量が変わると何がどうなるのか。
ここが「どのグリップを選ぶべきか」という問題の本丸です
ゴルフスイングにおいて、アドレス時とインパクト時の腕のローテーションを比較するとどうなっているかご存じでしょうか。
アドレス時よりインパクト時の方が、多少ローテーションしているというのが正しい形です。
これは実際に試してみるのが、分かりやすいです
当サイトは、アームローテーションをほぼ使わないボディターンの理論を採用していますが、それでも事実として多少のアームローテーションは入ります。
まず普通にアドレスをとっていただいて、
ローリーマキロイ(ドライバー)
via https://www.youtube.com/watch?v=wIiLM8ufWVI
手を③の位置(インパクトの位置)に持っていき、腰を回してハンドファーストなインパクトの形を作ります。
これをすると、(無意識に)多少のアームローテーションが入っていることに気付くと思います。
これで体感できなければ、ちょっと荒っぽい確認の方法になりますが、手の位置を「単純に」③の位置に持っていってみてください。フェースが開くはずです。
この開きの調整をするにはローテーションの要素が要るということです。
上の映像からもスイングにおいてローテーションが必要だということがお分かりいただけたと思います。
- 左手のエクスターナルローテーション(外側に回す動き)
- 右手のインターナルローテーション(内側に回す動き)
この2つの要素を、インパクト時にアドレス時より大きくする必要がある。
「スイングにはローテーション要素が必要」と分かったところで、ようやくグリップの話に戻ります。
ウィークグリップの本質
いきなりですが、ウィークグリップをオススメするのはこんな人です。
- 自分でハンドファーストを積極的に作りたい
- ボールをつぶすイメージで打ちたい
- スイングを自分で操作したい(車で言うとマニュアル)
なぜこのような人↑にオススメなのか。
ちまたでよく言う「スライスが出やすい人向け」「フックが出やすい人向け」というのはガセ……とまでは言いませんが、本質からは外れた副次的な話です。
少しレベルの高い話になりますが、なるべく分かりやすくお伝えしていくので、お付き合いください。
では、ウィークグリップについて解説していきます
このグリップは、アドレスの時点ですでに
- 左腕のエクスターナルローテーション(外側に回す動き)
- 右腕のインターナルローテーション(内側に回す動き)
を入れた状態でスイングがスタートします。
しかしインパクトの際は、
アドレス時よりローテーション要素をさらに増やさせないといけないわけですから、これは簡単ではないだろうと予測できます。
しかもウィークグリップは、アドレス時にある意味無理やり右手を被せて構えているわけなので……
当然、(バック)スイング中にフェースは開きやすくなるんですね
つまり、ウィークに構えてスクエアにインパクトするには、相当なローテーション要素が必要になるということです。
ここで多くのアマチュアゴルファーは「ある勘違い」をします
多くのアマチュアゴルファーは、ローテ―ションと聞くと「アームローテーション」をイメージしてしまいます。
これ自体は間違いとは言い切れませんが、多くの場合は過剰なアームローテーションをイメージしているはずです。
具体的には、
腕や手首を
「返す」
というイメージを持っている
はずです。
しかし、正しいボディターンスイングにおいて、ローテーション要素を増やす作業は必要ですが、実は手首を返す必要は全くありません。
手首を返す動作は、タイミングや小手先に頼る不確実なスイングになってしまうので、ボディターンスイングには合いません。
ローテーションはさせるけど
手首は返さない
これが、正しいボディターンスイングの極意です。
この極意が分かっていると、ウィークグリップでも正しく打つことができます。
つまり、手首を返さずにローテーションさせる動きが必要です
トンチのような話ですが、この方法は簡単です。
故意にアームローテーションはしなくていいので、その代わりインパクトで
- 左手を思いっきりボウ
- 右手を思いっきりカップ
にしてください。
体をしっかりターンさせて、左手できちんとボウを作れれば、これがローテーションの機能を果たします。
そして微量のアームローテーションが勝手に入ります
これがしっかりできているウィークグリップのトッププロと言えば、ジョンラーム選手です。
via https://www.youtube.com/watch?v=idChSwhlhik
凄まじいまでの左手のボウにご注目。
この左手のボウ(右手のカップ)というのは、ストロンググリップでもスクエアグリップでも、正しいハンドファーストなインパクトをしようと思ったら必要不可欠なものです。
しかし、最も求められるのはウィークグリップで握るときです。
つまり、ウィークグリップと左手のボウは、分けて考えることのできないスイングの本質ということになります。
なので、この「左手のボウ」を自分の意志でしっかり作っていきたい人に、ウィークグリップは合っているのです
- 自分でハンドファーストを積極的に作りたい
- ボールをつぶすイメージで打ちたい
- スイングを全て自分で操作したい(車で言うとマニュアル)
ちなみに、私がゴルフを始めたばかりの頃、「ウィークグリップ」という言葉を知ってまず思ったのが、
ウィークってことは、弱い打球しか飛ばないんじゃないの?
でした。笑
当時見ていたサイトがやたらとストロング推しだったこともあって、しばらくこの思い込みを抜けられず……。
今思えば、ゴルフ人生における大いなる遠回りでした。
もちろんストロングでもウィークでも、強い打球は打てますよ!
ストロンググリップ(フックグリップ)の本質
続いて、ストロンググリップ(フックグリップとも言う)について見ていきましょう。
オススメしたいのは、ウィークグリップと真逆の考え方の人です
- 勝手にハンドファーストになってほしい
- ボールを払うイメージで打ちたい
- スイング中、自分でやることを減らしたい(車で言うとオートマ)
ストロンググリップは、ウィークとは逆に、
- 左腕のインターナルローテーション(内側に回す動き)
- 右腕のエクスターナルローテーション(外側に回す動き)
を入れた状態でアドレスします。
つまり、スイングに必要なローテーションと逆方向にねじった状態から始動するので、インパクトにかけてローテーション要素を増やす作業は簡単です。
というより、(バック)スイング中にフェースは勝手に閉じていきます
なので、比較的ローテーション要素を意識しなくてもスクエアにインパクトすることが可能です。
左手のボウも、ウィークグリップと比べるとこれだけの差があります。
超ストロングの代表格 マットクーチャー
via https://www.youtube.com/watch?v=fWM_dBAHGWA&t=11s
もはや左手がカップ側に折れてますが(笑)、これでもアドレスよりは多少ボウになっています。
とにかくウィークグリップ(ジョンラーム)とは全く違うリストアクションになっている、ということをご理解ください。
これがグリップの差、スイングの差なんですね~
あらためてですが、ストロンググリップはウィークグリップと真逆の考えの方にオススメです。
- 勝手にハンドファーストになってほしい
- ボールを払うイメージで打ちたい
- スイング中、自分でやることを減らしたい(車で言うとオートマ)
スイングをシンプルに考えたい方は、ぜひ一度試してみては?
ただし、独特の感覚なので「どうしても合わない」という人も多いです
ちなみにストロンググリップの場合でも、あくまでインパクトの時に左手ボウ、右手カップという意識はマストです。
この意識がないと、手首をこねる「フリップ」という動きが入ってしまい、正しいハンドファーストで打てないので注意です!
フリップのイメージ図
via https://pluggedingolf.com/common-swing-flaws-scooping-or-flipping/
管理人もかつてはフリップに苦しみました……
スクエアグリップの本質
もうお分かりだと思いますが、スクエアグリップは「ウィークとストロングの中間」です。
- ハンドファーストはある程度自分で作りたい
- ボールを軽く叩くイメージで打ちたい
- スイングをそれなりには自分で操作したい
ウィークほどの強烈なハンドアクションは不要ですが、ストロングよりはスイングのシーケンス(動きの順序)を考えながら振っていく必要がある……
それがスクエアグリップです。
そういう意味で「スイングを作る」という観点においては、この握りがオススメです。
初級者~中級者は、まずはスクエアグリップでスイングを学ぶということですね
一方で、スイングの安定している中級者~上級者は、どれを選んでも問題ありません。
本来的にこの3つのグリップに優劣はありません
目指している方向性が違うだけです!
スクエア、ストロング、ウィーク/あなたはどれで握っているか
さて。
ここまでそれぞれのグリップについて検討してきましたが……
今回の記事は、実はここからが本題です
あなたは、自分が
スクエア、ストロング、ウィーク
のどれで握っているかを
正確に把握できているでしょうか?
(そんなの、自分は絶対スクエアに決まってる)
……と、私自身、長らく本当に思っていました。
しかし、スイング分析の過程で初めて、その認識が間違っていることに気付いたのです。
私の場合は、「上から叩いてハンドファーストに打ちたい」という意識が強すぎて、右手がかなりウィークになっていました
「言ってることとやってることが違う」というのは、ゴルフだけの話ではありませんが、注意が必要です。
グリップの判別方法について
不完全な判別法①
よく言われている判別方法に、こんなものがあります。
「左こぶしが2個以下はウィーク」
「2~3個がスクエア」
「3個以上はストロング」
via https://www.thediygolfer.com/golf-grip/
しかし、この判別方法は精度に難があります。
上の図のようにクラブを空中に浮かせたままグリップしたとき、残念ながら人によってフェースの向きは微妙に違うからです。
さらに、この確認方法の最大の欠点は「他人のグリップを評価できない」ということです。
via https://www.youtube.com/watch?v=iwarijSolDQ&t=13s
このミシェルウィーの画像を見て、彼女が何個のこぶし見ているかを知る術はありません。
不完全な判別法②
ならば、親指と人差し指が作るV字がどこを指しているか、
「右肩ならストロング」
「右耳ならスクエア」
「左耳ならウィーク」
via http://blog.markwoodgolfacademy.co.uk/2013/01/grip-check-test/
という判別方法が良いのでしょうか。
実はこれも、正確性が×です
なぜなら、アドレスした際のハンドファーストの度合いというのは、人によっても番手によっても変わってしまうからです。
少し極端な例ですが、
via http://kelvinmiyahiragolf-articles.com
こちらのふたつの画像、グリップは同じですが、構える位置が違います。
(左の画像はセンターで、右はハンドファースト強め)
これによって、V字が指す場所が変わっていますね
- 左の画像は、V字が右耳(=スクエア??)
- 右の画像は、V字が左耳(=ウィーク??)
同じグリップなのに構える位置のせいでスクエアになったり、ウィークになったりするでしょうか?
するわけないね
オススメのグリップ判別法
正しいグリップの判定に必要なのは、次の2つの要素です。
- 他人のグリップと比較できる
- 構える位置に左右されない
これを守りながらグリップを判定するには、「V字がどこを指すか」ではなく、
「V字とシャフトの関係性」
を見るのが正解です。
先ほどの画像を見てみましょう。
青線と赤線が作る角度が同じ
=ほぼ同じグリップである
ことが分かると思います。
「グリップは同じ」「構える位置が違う」ということですね
この観点から、実際にプロのグリップを判定していきましょう。
ストロンググリップ(フックグリップ)のプロ選手
まず、「超ストロング」と言われているマットクーチャー選手。
マットクーチャー(彼はここが始動ポジション)
via https://www.youtube.com/watch?v=fWM_dBAHGWA
これは相当なストロンググリップです。
(ただし、逆に言うと一番ストロングな選手でもこれくらいです)
大事なのは、矢印が肩を指していることではなく、あくまで矢印とシャフトラインが作る角度です。
測る必要はありませんが、赤ラインと青ラインで27度、オレンジと青で30度です
スクエアグリップのプロ選手
続いてニュートラルな選手。
タイガーウッズは一応スクエアグリップです(諸説あり)。
タイガーウッズ
via https://www.youtube.com/watch?v=oGTKW_UbusM&t=50s
こちらも測る必要はありませんが、赤と青で15度程度です。
カメラ位置やその時々のグリップ具合によって結果は大きく変わるので、あくまで参考程度です
ちなみに、タイガーは時期によって結構グリップが変わっていたり、
タイガーくらいをストロングと言うんだ!
クーチャーは「超ストロング」だ!
という人もいるかもしれません。
なので、一応もう1人スクエアグリップの選手を載せます。
ザンダーシャウフェレ
via https://www.youtube.com/watch?v=5Gtdiil583Y
人によっては、これはウィークと言うかもしれないですね
このように、超ストロング・超ウィークはともかく、スクエアグリップというのは、判定がなかなか微妙なものなのです。
ウィークグリップのプロ選手
最後にウィークグリップです。
ウィークグリップは、右手を被せたり左手の甲を飛球線側に向けるグリップですから、V字がシャフト線上や飛球線側を指していれば「ウィーク」と言えそうです。
実際に、ジョンラーム選手を見てみましょう。
ジョンラーム
via https://www.youtube.com/watch?v=y0KEyAmX3p8
おっと……?
左手は完全にウィークですが、右手はストロングですか?
実はこれ、トッププロにありがちで、他にもウィークと言われているジョーダンスピース選手なんかもこのパターンなんだ
ジョーダンスピース
via https://www.youtube.com/watch?v=6UKHsgFnpFE&t=6s
PGAのトッププロでいわゆる「両手とも完全にウィーク」という選手は実はほとんどいません。
左手ウィークでボウのイメージを出して、右手は無理をしないということなのでしょう。
右手の過剰なカップは振りにくいですからね
ということで、それぞれのグリップについて見てきました。
ザックリまとめると、こうなります。
- ストロング~ウィークは「どれくらいスイングを自分で操作したいか」で決めれば良い
- ストロング~ウィークの判定は「シャフトとV字」で確認する
その他のグリップの存在(おまけ)
ここまで、
- ストロンググリップ
- スクエアグリップ
- ウィークグリップ
という3種類のグリップについて見てきました。
しかしウィークグリップに関しては「左手はウィークだが、実は右手はウィークではない」ということも説明しました。
これと同様に、実はもうひとつ左右が別の握りになるグリップがあります
それが「左手ストロング&右手ウィーク」という握り方です。
雑巾をしぼるようなイメージですね
両手とも内側にしぼり込むこのグリップ。
実際に採用しているトッププロとして、最もメジャーなのはマキロイでしょう。
ローリーマキロイ
via https://www.youtube.com/watch?v=1WShT52M9HU
一見、力が入って良さそうですが、
- スムーズなアームローテーション
- スムーズなボウ、カップ
- スムーズなコック、アンコック
などが難しくなるので、アマチュアにはあまりオススメできません。
私自身、知らないうちにこのグリップになっていて、ハンドファーストの妨げになっていたという苦い思い出もあります。
普通のアマは存在を覚えておく程度にとどめておきましょう
逆に、どんな人にオススメなんですか?
ハンドアクションに問題のない上級者が、むしろ変な動きが入らないようにするのにちょうどいいと思うよ!
……ということで、グリップについて色々と考察してきました。
最後のグリップは特例としても、「スクエア、ストロング、ウィーク」はどれを選んでも打つことができます。
グリップの選び方には2通りあります。
- 自分がやりたいスイングから逆算でグリップを選ぶ
- フィーリングの合うグリップを選び、それに合ったスイングを作る
この記事を参考に、ぜひ
- 自分に合うグリップ
- そして、自分に合うスイング
を身につけてほしいと思います。
今回はここまでです!
別の記事でお会いしましょう!
おまけ:左手のV字が見えない時の対処法
左手は右手の下に隠れてしまいがちなので、V字がどこを指しているか見えにくい時があります。
この場合は、「ワッグルで右手を離す瞬間を狙う」というのがオススメです。
ワッグルで右手を外すマキロイの図
これが最も確実な方法です。
関連記事は以下からどうぞ。