アドレスにおける「アライメント」は、かなり重要な要素です。
あらいめんとって何?
要は「目標に向かって真っすぐ構えましょう」ということだね
しかし、「真っすぐ構える」と言うのは簡単ですが、いざコースに出るとこれがなかなか難しいのです。
特にアマチュアは多くのケースで右を向きがちというのは皆さんご存じのことと思います。
ここからお貸ししました
そこでこの記事では、ターゲットに対して真っすぐ立つ方法、そして「その先」について考えてみたいと思います。
正しいアライメントのための(と言われている)方法を検討する
スパットを決めることは是か非か
ショットの際に、よく「スパットを決めなさい」と言われることがあります。
ボールから数十センチ~数メートル先の目土や草などを目印にして、そこに向かって真っすぐ打っていく、という方法です。
遥か彼方にある目標に対して頑張って真っすぐ構えるよりも、近場を目標にするというのは賢い方法である気はします。
現にこの「スパット」を使った方法、ボウリングでは当たり前に行われていて、
この三角形のマークをスパットと呼び、ここを狙うことで、当てたいピンに到達するようになっています。
これをゴルフに応用すると、こんな感じ。
「よーし、80センチ先の白くなってるところを狙うぞー」
ということになります。
一見良さそうなこの方法ですが、ボウリングとの2つの違いに関しては把握しておく必要があります。
ボウリングとゴルフの「スパット」の違い①
ボウリングにおけるスパットは誤差が1ミリもありません。
厳密には1ミリくらいはズレているのかもしれませんが、基本的には極めて正確です
それもそのはず、ボウリングのレーンは細い木の板が何枚も組み合わさって人工的に作られています。
そして、当たり前ですがピンの位置も毎回同じにセットされます。
つまり、真ん中のスパットの先に100%先頭のピンが来るのです。
これは何万回やっても同じです。
一方、ゴルフのスポットは自分がたまたま見つけた自然物を勝手に「スパット」と呼んでいるだけです。
いくらしっかり確認したとはいえ、スパットの先にターゲットが来る保証はありません。
仮にスパットが正しい位置から1°ズレていた場合、250ヤード先では4ヤード以上ズレる計算になります。
250ヤード先で4ヤードなら全然大丈夫じゃん
まあ、4ヤードなら大丈夫なんだけど……
問題は「1°ズレたら」の部分です。
1°の誤差とはどれほどのものなのか。
参考までにアナログ時計の1分の角度は6°です
これは普通にズレる。笑
もしスパットが適切な位置から6°ズレていた場合、完璧に打っても250ヤード先で25ヤード以上のズレになります。
う……それはちょっと厳しいかも
普通に考えれば、自分が勝手に決めたスパットが正しいポジションにドンピシャでハマるとはどうしても思えません。
正しいようで正しくない(かもしれない)ものを目標に据える必要性があるかないか、です。
もちろん、スパットが絶対的にダメというつもりはありません
上級者でも使っている人もいますし、特に論外レベルで右を向いてしまう初心者にはかなり有効だと思います。
しかし、過信は禁物だということです。
ボウリングとゴルフの「スパット」の違い②
「ボウリングのスパットがなぜ有用なのか」というと、ボールがスパットの文字通り「真上」を通る点にあります。
当たり前ですが、ボウリングは床の上をコロコロ転がすゲームなので、スパットとボールは直接触れます。平面(二次元)です。
一方のゴルフはボールが浮くので、スパットとボールが直接触れ合うことはありません。三次元です。
三次元のモノに対して、二次元的に解釈するとどうしても無理が出てきます
スパットとボールが離れているので、悪いショットが出た場合、「なぜ悪かったか」の答え合わせができません。
ボウリングであれば、スパットは100%正しいところにあって、ボールと二次元的に重なるので、
今のはリリースが早くて、スパットのやや右を通ったから、右のピンに当たってしまった
というような分析ができます。
が、ゴルフの場合は「右に飛んだ」という結果に対して、
- スパットの位置が右に間違っていて、ショット自体は完璧だったのか
- スパットの位置はあっていたが、ショットが右に出てしまったのか
が正確には分かりません(感覚的には分かりますが、答え合わせはできません)。
まぁもっとも、ショットの答え合わせができないのはスパットが無くても同じです
しかし、だからこそスパットを使うのは無駄なひと手間(不確実性が増えるだけ)になってないか?……と思うわけです。
ここまで言うと、スパット否定派みたいですが、そんなことはありません。
確かに私自身は使っていませんが、スパットがある方が正確に構えられるという人は積極的に使えば良いと思います。
ただし、その際にスパットにも欠点がある、ということを知っておいてほしいのです(特にボウリングとは全く性質が違う)。
そのことに気付ければ、欠点に対して自分なりの対処法なりアプローチ法なりを考えられるはずです。
ボールのラインを合わせることは是か非か
パッティングの時に、ボールに書いてあるマークあるいは自分で引いた線をカップに合わせる……というのは多くの人がやると思います。
これをショットの際にもやろうというのが「ボールのラインを合わせる」という考え方です。
こちらも、むやみに否定することはしませんが、諸々考えるとスパット以上にオススメはしにくいです
まず、スパットの時と同じ懸念点「6°くらいはズレちゃうと思うよ」というのは、どうしても存在します。
そして、新たに2つの懸念点も発生しています。
1. ドライバーにしか使えない
当たり前の話ですが、ボールのラインをターゲットに合わせられるのは、ティーイングエリアかグリーン上だけです。
よって、2打目以降に関しては悩みが解決されません。
2. アーリーリリースを誘発する(可能性がある)
これは個人の(私の)感覚なので、「そんなことない」という人は良いのですが、
ティーショットでラインが真っすぐに揃っていると、「フェースを真っすぐ入れなきゃ」という思いが過剰になり、早めにフェースを戻したくなる感覚にとらわれます。
(普通に打てば左図で打てるのに、線を引くと右図のイメージでアーリーリリース気味に)
ボールに線が引いてあると、どうしても
フェースを真っすぐ入れたい!
と考えてしまいますから、コックが早めに解けてしまう可能性があります。
もっともこれは私の場合なので、気にならない人は使ってみても良いと思います。
ということで、「スパット」も「ボールのライン」も一長一短だということが分かりました。ここで一旦、「真っすぐ」について考えてみたいと思います。
真っすぐ構えることが、なぜこれほど難しいのか
アマチュアの多くが狂っていて、プロもコーチやキャディに見てもらって都度治しているアライメント。
ただ「真っすぐに立つ」だけなのに、なんでこんなに難しいの?
そもそも「真っすぐ立つ」とは何なのか。
下に2つ「真っすぐ構えている」っぽい画像を用意しました。
左の図は、スタンスをとる位置での平行をそのまま目標まで二次元的に伸ばしたもので、Bのラインは旗2本分(5m弱?)くらい左に伸びている感じですね。
一方、右の図は平行(仮にボールとの間隔を1mとすると、その1m)をずっとキープしているラインになります。
この2つ、当たり前の話ですが、同時には成り立ちません。
ではどちらが正しいか分かりますか?
ここの認識が複雑なことが、真っすぐ立つことを難しくしている要素の1つです。
人によっては左が正しいというでしょう。
「ゴルファーは右を向きやすいのだから、思い切って左を向くくらいでちょうどいい」という主張です。
またある人は右が正しいというはずです。
「遠近法で必ず直線は1点に集まるし、1mの間隔はどこまで行っても1mだ」という主張です。
うーん、どっちが正しいの?
結論を述べると、この2つの主張、どっちも正しく、どっちも不完全です。
事実として正しいのは右です。
しかし、感覚として正解に近いのは左なのです。
これをまず「体感」してもらいます。
肩越しに「真横」を把握するのが、人間は大の苦手
ゴルファーの中には、「人が右を向いてしまうのは目標までの距離があるためで、近くのものであれば真っすぐ構えられる」と考えている人がいます。
そこで、あなたに実験をしていただきます。
今いる部屋の中で適当に何か目標を決めてください。
2mくらい離れていれば十分です。
当たり前ですが、部屋と平行の関係にあるものは選ばないでくださいね。笑
この目標を、普通に直立し、肩越しに自分の「真横」に眺めてください。
ゴルフ的に後方からラインを確認して、足元を揃えて……とするのではなく、本能で一発で「真横」を向いてみてください
そして「これで真横だな」と思った姿勢で足元を見てみると、恐らくビックリするくらいクローズになっている(右を向いている)はずです。
この実験、結構インパクトが大きいので是非やっていただきたいです。
たかだか2m程度の距離でさえ、人間は真っすぐ(正確には真横に)構えられないのです。
本当にゃ~
この理由に関して、私は生物学の権威でも何でもないので分かりませんが、推定される理由は2つで、まず「人間の体は可動域が多すぎて広すぎる」ということでしょう。
仮に首しか動かない(そして首は90°までしか動かない)のであれば、真横の把握は簡単です。
しかし人間は、肩も腰も足首も全部回ります。
なので、肩越しにモノを見る場合、これらをフルに使って「回しすぎて」見てしまうのだと思います。
これらをすべてコントロールするのは大変で、「回しすぎた」方が楽なので、左足は前に出し(クローズに構え)、首と体を思いっきり回すのです。
人間は大変だね~
もう一つの理由が(1つめと連動していますが)、人間の目はモノを正面から捉えるためのものであるということです。
鳥や魚と違って、自分の「真横」というのは、普段見るものではないですし、どうしても正面から立体的に目標を見たくなってしまいます。
そのため、基本的に横の物を見るとき、肩が回ります(正面で立体的に見るため)。
肩が回るということはすでに「90°横を見ている」とは思えなくなってしまいますから、これで正しい方向感覚を失ってしまうのです。
ということで、覚えておいていただきたいことは、「人間は真横を見ることが、大の苦手だ」ということです
この事実が分かると、先ほどの画像の見方も少し分かってきます。
まず右に関しては、事実としては正しいです。
後ろから写真を撮ってこのように構えられていれば、それは正しいアドレスです。
しかし、この「感覚」でスタンスするとほぼ100%右を向きます。
人間は肩越しに真横を把握できないからです
では、左のように立つのが良いのでしょうか。
イメージとしては右よりマシな気はしますが、このセットアップにも問題があります。
Bの位置をどこに持ってくればいいか分からないということです。
この画像では真後ろから見ているので、「二次元的な平行」が分かります。
しかし、実際のアドレスでは結局肩越しの眺めになるので、自分がどこを向くべきか、というのを正確に把握するのは難しいです。
よく「体はフェアウェイの左端を」とか「目線は30ヤード左を」とか聞くけど?
フェアウェイは幅変わるし、「30ヤード左」も
- そもそも、それが正しいか
- 人によるのではないか
- 正しかったとして、正確に向けるか
と、課題が山積だよ。笑
そもそも、この「二次元的な平行」というものはこの世に存在しないラインで、右を向きすぎてしまう人向けの対症療法でしかありません。
全ての平行な直線は1点に収斂しますが、この感覚で立つと右を向いてしまいます。
ターゲットに対して真っすぐ構える方法
ここまで考えると、人間の目にできることできないことが分かってきます。
まずできないことは「肩越しに真横を把握すること」です。
つまり、スタンスをとってからの景色の見え方には、そこまで意味がないということになります。
よく「肩越しの景色を覚える、肩越しの見方に慣れる」などと言われたりします。
私も「景色」自体は「飛球線イメージやターゲットの明確化」として大切にしていますが、これを頼りに「真っすぐ構える」ことはやめた方が良いでしょう。
逆に、できることは「飛球線の真後ろから、真正面にターゲットを捉えること」です。
人間の目は真横を把握することはできませんが、真正面は大得意です。
なので、意識するのはこの1本だけで大丈夫です。これ以外は不要です。
意識するのは白線のみ。赤線はノイズです。忘れ去ってください
まずターゲットとボールの後ろに立ち、ひたすらこの1本の白線のみを意識して、とにかくシンプルに白線と平行にアドレスします。
これが全てです。
もう一度言いますが、これが全てです。
ここで
- 「白いラインを正確に把握すること」と
- 「足を平行に置くこと」
ができれば、後はただ直立するだけで肩のラインも、腰のラインも、膝のラインも勝手に平行になります。
なので、目線は堂々とターゲットを見ればいいのです
ここでむしろ「30ヤード左」を見るようなことをすると、先ほども述べましたが、人間の目は正面でモノを捉えたがるので
- 右肩を前に出したり
- 逆に過剰に首を回してクローズになったり
変な構えになりかねません。
何度も言いますが、人間は真横を正確に把握できないので、足元の平行を信じて、ターゲットまでの弾道を意識する方が理にかなっています。
しかしここで、このような反論が想定されます。
- 真後ろから見れば白線は意識できるけど、スタンスまでずっと正確に把握し続ける自信がないです
- スパットの時に6°はズレる、とか言ってたけど、なんの目印もなければ6°以上ズレると思います
この反論はごもっともです
空間認識能力には個人差がありますから、この方法でも右を向いてしまう人がいても、何らおかしくないと思います。
その場合はスパットを見つけてそこに向かって平行に立つ、ということをするのが良いでしょう。
あとは、試合では使えませんが、プライベートのラウンドでは
- 後ろから動画や写真で撮ってもらったり
- アドレスをしてから両足のラインにクラブを置いて真っすぐ構えられているか確認したり
- あるいは、初めから飛球線上にクラブを置いて、それに合わせてアドレスに入る練習をする
など、アライメントを確認する方法を通じて感覚を養っていくしかありません。
※注意 2019年の新ルールへの改正で「クラブを地面に置いてアライメントを確認しても、打つ前に取り除けばOK」というルールは消滅。キャディの飛球線後方からのアライメントの確認が×になったのと同様、置くこと自体が2打罰になりました(規則10.2b(3))
ちょっと話が多方面にわたってしまい、ややこしくなったのでまとめます。
正しいアライメントでアドレスをするには
- 「目標物とボール」を結ぶ1本の直線を強く意識する
- そして、それに対してとにかく平行に構える
が必要
ということになります。
こう書くと「そりゃそうだろ」という感じですが、これが正しく真っすぐ立つための合理的な方法です。笑
そしてその際、できればスパットよりも(だけでなく)
「目標地点」と「弾道」
というものを、漠然とでも良いので意識するようにしましょう
こんなイメージです
「真っすぐ立つ」とは言え、絶対に数°のズレは生じます。
これは仕方ないことです。
その際に50センチ先のスパットしか意識していなければ、250ヤード先では大惨事になる可能性があります。
しかし、250ヤード先を意識していれば近場で多少ズレていても、人間上手くできているもので、無意識下で帳尻を合わせてくれるものです。
アライメントは「目標に向かって真っすぐ構えること」ではない
ここまで、アライメントについて見てきました。
冒頭でも述べたように、基本的には「どうやってターゲットに対して真っすぐ構えるか」という観点から述べてきました
が、実はアライメントとは「目標に向かって真っすぐ構えること」ではありません。
また矛盾したことを……
と言われそうですが、アライメントの本質はあくまで「ボールをターゲットに運べる構えをとること」です。
極端な話、グリーンに背中を向けて構えたとして、それでボールがグリーンに乗るなら、何の問題もないわけです(そんなことはあり得ませんが)。
これ、何が言いたいのかというと、
- 人によっては、
- あるいはクラブによっては、
- はたまたシチュエーションによっては、
「真っすぐ構えること=ターゲットに打てること」にはならないということです。
人によっては「真っすぐ構える=真っすぐ打てる」ではない
ほぼ完璧に真っすぐ構えられているのに、
- スイングの癖で、
- 体の構造で、
- あるいは理由は分からないけれど、
どうしても真っすぐ行かない(例えば、決まって少しだけ右に出てしまう)ということはあり得ると思います。
そういった場合、ほんの少しだけオープンに構えるなどの対処はアリだと思います。
大事なのはボールを目標に運ぶこと、ですから。
ただし、「少しではなく、ある程度押し出してしまう」などの場合は、根本的にスイングを治すべきです
クラブによっては「真っすぐ構える=真っすぐ打てる」ではない
一般に「長いクラブほど右に、短いクラブほど左に飛びやすい」とよく言われます。
逆に、一部上級者には「長いクラブほど左に、短いクラブほど右に飛びやすい」と主張する人もいます。
正直、私くらいのへたっぴレベルでは、
うーん、そうかなぁ?
という感じですが(笑)、原理的にはこういうことです。
ショットを上から見た図
- 最下点より手前で打てば、軌道的に右に行きやすい
- 逆に最下点後は左に飛びやすい
ということです。
まあしかし、ここで重要なのは、上の2つの主張のどっちが正しい、間違ってるという話ではありません。
大事なのは「番手によって、まっすぐ構えたところで真っすぐ飛ばない要素を潜在的に持っている」ということです。
これらの作用がどう働くかは個人によって違いますので、自分のスイングに合わせて、アライメントも微調整する必要があります。
シチュエーションによっては「真っすぐ構える=真っすぐ打てる」ではない
これに関して最も分かりやすいのは、傾斜地でしょう。
つま先上がりで打てば、打球は当然左へ行きやすいです
左足上がりも引っ掛けやすい、って言うよね
あとは、とんちレベルの話になりますが、
- 風があるケースも真っすぐ構えても真っすぐは飛んでいきません
- ピンが池の横ギリギリにあれば、そこを真っすぐ狙うと恐らくリキんで真っすぐ飛びません。
このように、アライメントの本質は必ずしも「目標に真っすぐ立つこと」では決してないのです。
「アライメント」の結論
長々述べてきましたが、つまるところ、
クラブや状況によって、適切にショットするにはどう構えれば良いかを、正確に把握し実行すること
がアライメントの本質です。
しかし、それを知るためには少なくとも一度「目標に対して真っすぐ構える」ということができるようにならなくていけません。
真っすぐ構えるということができるようになって初めて、自分なりのアライメントというものを考えていけるようになるのです。